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「編集王」

土田世紀/小学館・全16巻

 雑誌で最終回あたりのシリーズを読み「これ面白いけど今からコミックそろえても10冊以上あるなあ」、と大学んとき思いそのまま諦めていた のだが、数年前に購入したい熱が再発。執念をもって全巻集めきりましたよ。書店で注文すると品切れで返ってくるので小学館のホームペ ージで購入した方がいいです。私はそうした。
 ボクサーの世界チャンプの夢に破れた男が、幼馴染みの兄ちゃんのつてで出版社でバイトを始め、その中で繰り広げられる主にコミック界の裏と熱い編集者たちの話なんですね。
 今回の注目は仙台さんという、大物漫画家のチーフアシスタントみたいな人です。何故かこの人だけは1巻にでて、8巻にでて、13巻ぐらいで昔話をしてもらって、16巻にもちょこっと出てくるんですな。主役のカンパチよりもこっちが主役じゃん、という雰囲気満点です。いや、本当に主役のボクサー崩れなんかより、仙台さんの生涯の方が絶対熱い。惚れました。ヒロ兄(カンパチの幼馴染み)の次に。
 最初は鼻持ちならない大物漫画家の、鼻持ちならないアシスタントだなって感じでした。
 次にでてきたときは、既に惰性で漫画家を続けているもう漫画家としては終わってしまった大物漫画家が、アル中で転落していくのを立ち直らせようというとても好感度抜群のおっさんになってました。「男シリーズ(このシリーズ、全部サブタイトルに男がつくので)」の中に、仙台さんが夢の中で過去の回想をするとこがあるんですが、もうそれが聞くも涙語るも涙。
 漫画家になるために上京し、件の大物漫画家のアシスタントになる。漫画に対して真摯な姿勢の先生を彼はすごく尊敬する。でも先生は売れていくうちにどんどん酒浸りになり、全く漫画を描かなくなる。仙台さんが代筆したり、過去のあの先生はどこにいったのっ!!って感じ。
 そんなある時、転落しかけている先生は仙台さんに「なんでいつまでもここにいるんだ。おまえなら一本立ちできるのに、何か腹に一物あるの か」と問い詰める。
 実は仙台さんには辛い過去がある。彼は漫画家としての人生を編集部に潰されているのだ(あの頃シリーズ参照)。それはもうひどい話だった。おまえらの血の色は何色だ!と言いますよ、私でも。
 そういう辛い人生も含め挫折しそうになったとき、大きな夢を追いかけて自分の前を歩いていく先生がいてくれたから、自分よりも戦災孤児だった先生の方が一杯辛いメにあってるはずなのに、弱音一つ吐かずに漫画を描いてる先生がいてくれるから、と叫ぶのだ。
 こんな私のつたない文章じゃ、この話の山場の感動はきっと伝わらないでしょう。
 仙台さん素敵!仙台さん万歳!こんな熱い漫画バカの話、他にも数点知ってるが仙台さんほど熱い人はいない!
 この「編集王」という話、他にも廃れきった文芸誌の編集の人とか、天才漫画家の話とか、半分オカマの副編集長の家族愛とか、最後は再販制度に言及して幕を閉じました。熱くなり、感動し、考えさせられ、久々に明日へ前向きにさせてくれる漫画に出会ったなあという一品でした。
 ところで舞台となる「ヤングシャウト」の編集長の人生もある意味波乱万丈でわからなくもないいい話なんですけど、今現在の性格があまりにも駄目駄目なので語るに値しません。
 とにかく仙台さんです。
 少しでも興味を持った方、8巻だけでも手に入れて仙台さんの熱さを一緒に感じませんか。
 そんで惚れた人は13巻ですよ。彼の悲しい過去と、編集長がまだ熱い血潮を持っていたあの頃を体感してくださいよ。
 土田世紀という人は絵はうまいし見せ方もいい感じだし、なんかもう私のハートをゲットしましたね。
 といっても「編集王」しか読んでないんですけど。
 他にも「ありゃ馬こりゃ馬」「同じ月を見ている」とか描いてますが見てません。競馬漫画とか見て意味わかんなかったらなあと少し引き気味です。
 でも将棋わかんなくても「月下の棋士」はいけるから大丈夫なのか。まあでもあれは、将棋漫画というにはなんか変なんだけど。
 勇気を出して手を出そうかと思ってる今日この頃ですが、この人の本ってあんまり古本で見ないんですよね。編集王も結局古本で見つからなかったし。絶対数が少ないのか、皆買っても手離さないのか、一体どちらなんでしょうねえ。


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